56-56 Special Classes by Dr. Knoll (2/2)

ほんの少し魔法の発動点を動かすだけでも、まるで一万本の針の穴に糸を通し続けてもこんなに疲れないという程に神経を摩耗させる.

私の顎から汗が滴り落ち、床の石畳を打つ音がやけに響いて聞こえた.

「──出来──た────?」

気が遠くなるような極限の意識の集中の果てに、詠唱箇所を目的の位置まで動かし終えると、気づけば私の手の中には光り輝く小さな火の玉が出現していた.

でも、ここで終わりではない.

私はその玉を壊さないように慎重に維持しながら、更に二種類の魔法を同時に四つ発動する.

「──【風爆破(ウインドブラスト)】、【浄化(ピュリファイ)】──」

【風爆破(ウインドブラスト)】は炎の威力を増し、指向性と操作性を持たせる為.

【浄化(ピュリファイ)】は────おそらく、文献で読んだ限りではあの魔物に有効な魔法だ.

あの【灰色の亡霊(ファントムグレイ)】は厳密には不死族(アンデッド)ではない.

でも、それに近い特性を持っていたという.

祭壇に封じた時に聖職者が集まったのも、【浄化(ピュリファイ)】を詠唱し続けると動きが鈍ったからだという記述があった. かつて多くの犠牲を出しながら先人が記録してくれたその伝承に、私は賭けてみることにする.

──【滅閃極炎(ヘルフレア)】を二つ.

──【風爆破(ウインドブラスト)】を二つ.

──【浄化(ピュリファイ)】を二つ.

これで、六つ.

これが私の限界詠唱数.

それらを────────全て、融合(・・)させる.

「────案外────やってみれば、出来るものですね」

先ほどの【滅閃極炎(ヘルフレア)】で、大体のコツは掴めたようだ.

意外に、一度出来てみれば、さほど難しいという印象もない.

とはいえ二つ融合させるだけでも、とてつもなく精神を摩耗させるが──今はそんなことは構っていられない.

私は一呼吸おくと、手の中に生まれた『輝く嵐』に魔力を込めはじめる.

────私の全てをこの一撃に賭ける.

この一撃の後には私の中に何も残らなくてもいい.

そのつもりで、全身全霊を手の中に荒れ狂う炎に込める.

いや────むしろ、私はこれから、これぐらいのことは簡単に出来るようにならなければいけないのだ.

そうでなければ.

これから先、ノール先生の弟子などと…………恥ずかしくてとても名乗れない.

《────────おおおおおおおおおオオおおおおおおおオオおおおおオオおおおおおおおおオオおおおおおおおおおおおおオオおおおおおおおオオおおおおオオおおおおオオおおおおオオおおおおおおおおおおおおおオおおおおおオオおおおおおおおオオおおおおオオおおおおオおおおおおおおオオおおおおオオおおおおおおおおおおオオおおおおおおおオオおおおおオオおおおおオオおオオおおお────》

私の発動させようとしている魔法に気がついた【灰色の亡霊(ファントムグレイ)】は、あの恐ろしい叫び声を上げ、一直線に無数の触手を伸ばしてくる.

まるで、それは音もなく迫る闇の中の雪崩のように思えた.

先ほどよりもずっと動きが速く、鋭い.

あれが近づいてきたら、私は躱すことなどできず、即座に命を落とすことだろう.

────でも、きっと大丈夫.

今はそんな確信があった.

先程まであんなに恐怖していたあの触手が、もう、恐れる必要のないものに思える.

何故なら────

ノール先生に教わったこの技術を使いこなすことができれば、あの【灰色の亡霊(ファントムグレイ)】すら、恐るるに足らないと分かったから.

先生は、この感覚を私に教えたかったのだ.

どんな闇でも払い除けられるような────この絶大な『力』の感覚を.

「ありがとうございます、ノール先生」

準備は全て整った.

私は輝く嵐の塊となった融合魔法を目前に迫り来る【灰色の亡霊(ファントムグレイ)】の触手の群れに向け、大きく息を吸い込んだ.

「────では、行きます────【滅閃極炎(ヘルフレア)】」

私の手から極大の輝く炎がまっすぐに【灰色の亡霊(ファントムグレイ)】へ伸び────その射線上にあるもの全てを消滅させた.

同時に周囲に飛び散った無数の魔力の残滓が弾け、残りの白い身体を巻き込んで破壊していく.

でも、この程度ではあれ(・・)はまた、身体を再生させるだろう.

だから────

「【風爆破(ウインドブラスト)】」

私は荒れ狂う暴風を制御して、輝く炎を目一杯拡散させた.

────あれ(・・)の一片も、残さない.

そのつもりで【浄化(ピュリファイ)】と融合させた灼熱の嵐をコントロールし、その場を浄化の炎で埋め尽くす.

周囲に飛び散る【灰色の亡霊(ファントムグレイ)】の残骸を、一つ残らず焼き滅ぼすために.

私は不思議なほど冷静だった.

一歩間違えば一瞬で身体が消失する程の灼熱の嵐が吹き荒れる中、何の恐れもなく魔法行使を続けていた.

この融合魔法のコントロールはとても、難しい.

でも、私は先ほどこれとは比べものにならない程の神業を目にしたばかりだ.

Compared to that, this is nothing.

The gap in skill is so great that it's hard to even compare.

──── When I think of it like that, I even smile.

I'm sure you'll be pleased to know that I'm not the only one who's had a bit of trouble.

In the event that you have any kind of questions regarding where and how to use the internet, you can call us at the web site.